絶対にずっと好きだと証明しましょう

12年目にしてやっぱりこんな時がきたかとふと部屋の窓に視線を流せば、満月には数日足りないいびつな月が黄色に輝いていた。
その光の中に初めて「潮時」という言葉が浮かび上がった。

樹は彼女といつ出会って、どれくらい好きになって、付き合ってどれくらいになるのだろう。
近頃会えなくなった理由が彼女のせいだとしたら――。
楓は傷口に塩をぬりこむように樹とのデートが途絶え始めた時期を逆算してみる。
実験を終わらせる時が近づいているのかもしれない。

明日は樹と会う約束をしているが、樹は何も言わないだろう。
楓があきらめるまで、掴んだ樹の袖を放すまで、樹は楓を振りほどかない。
そしてもし楓がもうやめよう、別れようと降参したら、樹は「ほらね、絶対なんてないんだよ」と笑うのかもしれない。

12年前のあの日のように。

それは悔しい。
悔しいけれど、悔しいとかそんな感情で恋愛関係は続けるものじゃない。
続けられるものじゃない。
樹の気持ちが楓にないのなら、その時点ですでに恋愛関係ではないし、もっといえばそもそも樹は楓にどれくらいの恋愛感情を抱いていたのか。
そこまで遡ると、もうさみしくてさみしくて、寂しくて。
気づくと楓の頬にぬるい雫がこぼれていた。

「楓ちゃんがなにかアクションしない限り、ずっとこのままかもね」

昼には余裕をもって聞き流していた美幸の言葉が「ほらね」とばかりに楓の周りを旋回している。

このままでいられたら、そうならいいけど。