絶対にずっと好きだと証明しましょう

樹が留学すると聞いて財力と行動力のある美幸なら追いかけていくのではないかと楓は心配していたが、1年上の美幸は就活が始まっていたからだろう。
その心配は杞憂に終わった。
健夫は相変わらず美幸に体よくつかわれながらも変わらぬ情熱で彼女を追いかけ、美幸も最近はまんざらではない様子だった。健夫と一緒にいる美幸は以前よりも楽しそうに見えた。
いいなと思えるくらいに。
本命は諦めて、猛烈にアタックしてくれた幼馴染と結婚したというおばあちゃんの昔話を思い出した。
「楓、女は愛するより愛される方が幸せなのよ」と何度も勝ち誇ったように言っていたっけ。
じゃあ男はどうなんだろう。

――ずっと好きでいてくれたら嬉しいけど――

樹はあの時、そういってくれた。
ソメイヨシノの樹の下で。

本気で言ったのか、今も覚えているのかはわからないけど。


次の週末には樹からの連絡を待たずに楓から電話をすることにした。
呼び出しているときは未だにドキドキする。

「もしもし」

樹が出る。まだ緊張はとけない。

「今、大丈夫だった?」
「うん。そろそろかけようかと思っていたんだ。この間はユーゴ君としか話してないし」

その言葉を聞いてようやく楓はホッとする。

「ユーゴさん、私のために電話してくれたのに、りか子さんの話が出たから速攻私の存在を忘れたらしい」
「彼女ふらふらしてるからね」

楓は『りか子さん』についていろいろ聞きたかったがまた彼女の話で終わるのは嫌だったので話を変えた。