「遅くなりました。」

いそいそと台車を片付け自身のオフィスへと戻る。
いつもなら大嫌いで落ち着かないこの部屋も、今だけはどこか安心する。


「あ!パート君遅いよぉ!!
この資料を午後の会議用に30部コピーして、会議室の準備もしておいて!!
ペットボトルのお茶は備品庫から出して来てよ!」

丁度ど言うべきか。
部長がやってきて、資料をドサリと机に置き去って行こうとする。

「すみません。
あ、あの!部長!ちょっといいですか?!」

珍しく呼び止める光に、部長を含め近くにいる職員もチラリと光を振り返る。

「なんだよ?!あんまり時間ないんだけどなぁ!辞めたいとかそう言う話?!それなら人事に連絡してくれたらいいから!!」

「あ、いえ!そんな事じゃなくて!廃棄庫での話なんですけど!」

「はぁ?!ゴミが溜まってて捨てられなかったとかか?!」

「違います!ゴミは捨てれました!そうじゃなくて、」

「だったらなんだよ?!俺は午後からの会議の事で一分一秒も惜しいんだよ!!簡潔に分かりやすく言ってくれよ!!!」

矢継ぎ早に話す部長は明らかにイライラしているのが見て取れる。

(こんな状況で確証もないのに、部外者かもしれない人がいました!なんて報告したら余計に怒られるかな····。)

思わず口ごもってしまった。
隣でチラリと光たちのやり取りを黙って見ていた職員も、フッと鼻で笑い視線を外す。

「パートなんだから、言われたことだけやってりゃいいんだよ!!パートと違ってこっちは抱えてる責任も仕事も比じゃないんだよ!!!」

「っっ!!······す、すみません。もう大丈夫です。」

心を踏み潰された気分だ。
ここまで言われたことは初めてだった。
軽い嫌味は今までにも何度も言われてきたが、こんなにもバカにされた発言はなかった。
あまりの悔しさに涙すら出ない。
心の中の我慢してきた糸がプツンと音を立てて切れた気がした。

(バカみたい。やっぱりこんな所辞めよう。
特にこの部長は変だもん。
泥棒が入ろうが、変質者が入ろうがどうでもいいや。
1つ気になる会社もあったし連絡とってみよ!)


無言のまま、そして心の中も無の状態のまま言われた業務だけをこなして行った。