男は私の体を服の上、フードの上から撫で回している。
「止めろ、“アネア”に手を出すな!!」
息を切らせたシードの声。
彼はこちらに駆け寄ってきた。
それでも私を離そうとしない男に、シードは足早に近付いていく。
すると突然男は焦りながら小振りのナイフを取り出し、けん制するつもりなのか彼の顔の前目掛けて振りかざした。
ナイフは彼の頬をかすめ、フードと切れてほつれた顔の当布に血がにじむ。
「シード!!」
恐怖に震えていた私もそちらに油断していた男の腕をようやく抜け出し、彼に急いで駆け寄る。
男は後ろも振り返らず逃げ去った。
「ああ、良かった……今度は間に合った。僕は、今度こそ君を助けられたんだ……!!」
シードは感極まる声で呟く。
私は急いで自分のハンカチを、彼の出血のある頬の傷口に強く当てた。
「何を言っているの!! 貴方はもうこれで二度も私を助けてくれたじゃない…!」
私はそこでようやく自分のフードが完全に外れ、しっかりと顔が見えてしまっていることに気付く。
「あ、ああ……」
私は何も言えずにいた。
彼は歳上が好みだと言っていた。
しかしいま私は声を取り繕うことも、老婆の“アギー”でいることも忘れている。
私は、彼をずっと騙していたのに……
私は顔を手で覆うこともできずに困惑と不安のまま彼を見つめる。
しかし彼は私を見て微笑んだ。
「……君は変わらないね。やっと顔が見えたよ。表情が悲しげだったり、辛そうなものばかりでなくなって良かった……」
「止めろ、“アネア”に手を出すな!!」
息を切らせたシードの声。
彼はこちらに駆け寄ってきた。
それでも私を離そうとしない男に、シードは足早に近付いていく。
すると突然男は焦りながら小振りのナイフを取り出し、けん制するつもりなのか彼の顔の前目掛けて振りかざした。
ナイフは彼の頬をかすめ、フードと切れてほつれた顔の当布に血がにじむ。
「シード!!」
恐怖に震えていた私もそちらに油断していた男の腕をようやく抜け出し、彼に急いで駆け寄る。
男は後ろも振り返らず逃げ去った。
「ああ、良かった……今度は間に合った。僕は、今度こそ君を助けられたんだ……!!」
シードは感極まる声で呟く。
私は急いで自分のハンカチを、彼の出血のある頬の傷口に強く当てた。
「何を言っているの!! 貴方はもうこれで二度も私を助けてくれたじゃない…!」
私はそこでようやく自分のフードが完全に外れ、しっかりと顔が見えてしまっていることに気付く。
「あ、ああ……」
私は何も言えずにいた。
彼は歳上が好みだと言っていた。
しかしいま私は声を取り繕うことも、老婆の“アギー”でいることも忘れている。
私は、彼をずっと騙していたのに……
私は顔を手で覆うこともできずに困惑と不安のまま彼を見つめる。
しかし彼は私を見て微笑んだ。
「……君は変わらないね。やっと顔が見えたよ。表情が悲しげだったり、辛そうなものばかりでなくなって良かった……」



