君のそばにいたい 〜『君が望むなら…』続編〜

「アギー、待っていたよ」

 彼はいつも私の仕事終わりに店の裏へやってくる。
 そしていつも明るい声で私に声を掛けた。

 私との約束通りかなり離れたところを歩き、貧民街の人通りがほとんどなくなった辺りで私の隣りを歩き始める。

 彼は私に触れることもなく、時折今までの旅で見てきたものの話を私のそばで語って聞かせた。
 その時の彼の目は輝き、声は弾んでいる。

 ところが、彼の旅に出るまえの話は一度も聞いたことがない。
 私自身も過去を話すことはできないため仕方が無いけれど、気になる時はさすがにたまにある。
 しかも彼は自身が話すばかりで、私のことはまだ何も聞こうとしなかった。

 確かにその方が私は気が楽でいいけれど、彼は自身の経験を私に話すだけでいいのだろうか?
 好きな相手のことを、知りたいと思うことはないのだろうか……?