君のそばにいたい 〜『君が望むなら…』続編〜

 彼は考え込んでいるのか下を向いて押し黙り、そしてしばらくして明るい声でまた尋ねる。

「……君は、人を好きになったことがないんだね。ではもう一つ聞こう。僕のことは嫌い?」

 “僕”。
 ようするに、私の目の前の彼のこと。

 もっと分かるはずはない、彼とは会ったばかり。
 しかも今までほとんど会話も避けていたのだから。

 次は突然の言葉に思わず黙り込んでしまう。

「もし、君が僕のことを好きか嫌いかも分からないなら、それが分かるまでだけでも僕と一緒にいてみてくれないか?」

 彼は改めて私に提案する。

「どうかな? 君は今まで知らなかった“異性”といることを意識する、良い経験になる。僕は好きになった君と少しの間だけでも一緒にいられる。悪いことではないと思う。君が嫌がればすぐに止めよう」

 この人は私が結婚した彼と違い、想いを真っ直ぐに伝えてくれる。

 カイトは自分の気持ちも私に伝えてくれず、意見もなく私の提案に頷くばかり。
 人当たりの良すぎたあの彼に自分の気持ちなんてものがあったのかすら、今では疑問に思うほど。

 私は恋をしたことがない。
 結婚相手だったカイトが好きだったのかなど、考える余裕も無かった。

 そんな私が、この彼と……
 老婆の振りをした、この私が……