「……っ、うう~…」
思い出したらまたぽろぽろ涙がこぼれる。
ーー私に泣く権利なんて、ない。
ただの自惚れ。上げて落とされた、自分だけがそう思っているだけ。
ベッドのシーツに大粒の涙がたくさん染み込む。
ーそのとき、
ガラ、と音を立てて開かれた扉。
向こうに立っていた人は、
「……えっ、胡桃ちゃん……?」
「……俊、くん」
◇◇
最初、私の顔をみて焦った俊くんは、私が泣き止むまでそばにいてくれた。なにも言わずに。
「ー落ち着いた?」
「うん、ありがとう……」
「……なにがあったか、聞いてもいい…?」
俊くんが隣に座ったことで、ぎし、とベッドが深く沈む。
私はぽつぽつと、静かに話し出した。
自分が綾瀬くんを好きだって気づいたこと、綾瀬くんが女の子といっしょにいたこと、…時々つらそうな顔をしながら、聞いてくれた。
「……そっか…。…胡桃ちゃんは綾瀬のこと諦めるの…?」
「……ううん。諦めるっていうよりは…この気持ちをすぐには消せない、かな」
すぐには消せない。消したくない、…諦めたくない。
初めて知ったこの気持ちを、まだ大切にしていたい。
でもこんな苦しいままでいたくない。
矛盾した思いがぐるぐると頭を支配している。
「……じゃあさ、俺を利用しなよ」
「……っ、え」
「俺は胡桃ちゃんが好きだよ。こんな辛そうな顔してる胡桃ちゃんをほっとけない」
突然の告白に驚いて、瞬きを数回繰り返す。
「……すきって…」
「うん。ずっと好きだった。…今付き合ってなんて言わない。だから、…俺のこと、ひとりの男として意識してよ」



