クールな綾瀬くんと、秘密の愛され同居始めます。






「…っ、ふ、ぅ」



誰にも泣いていることがばれないように保健室に移動して、ふかふかのベッドに座る。



保健の先生には体調が悪いと嘘をついて休ませてもらって、罪悪感がずしりと重く感じる。



……だけど、それよりも胸がズキズキと痛い。



「…っ、う、っ…」



ここに誰にもいなくてよかった。ひとりの空間は寂しいけれど、こんな涙でぐしゃぐしゃな顔を見られたくないから。


ーピコンッ


スマホがチカチカと光ってよく見てみると、希ちゃんからの連絡だった。



『胡桃、大丈夫?体調悪いって聞いたけど、ちゃんと休めてる?』



「なにか欲しいものがあったらいいなよ!」と私を心から心配している文章が胸じんわりと染み込むと同時に、申し訳なさでいっぱいになる。




「…っ、ふぅっ…」



ぽろぽろとこぼれ落ちるそれは、いまだに止む気配はない。



ーかなしい。くるしい。



胸にぽっかり大きな穴が空いたみたい。


全国の恋する女の子たちはみんなこんな気持ちなのかなあ…、と今の表情に似合わない呑気なことを考える。



(初めてだなあ…。こんな気持ち)



自分でもよく分からなくて、制御不能で。




あの女の子が綾瀬くんの腕に抱きついていたのを見たときの気持ち、今もちゃんと覚えてる。



「ーー“さわらないで”って……そんなこと、いう権利なんてないのになあ…」



なんてどす黒い感情。自分でも知らないものが溢れていて、自分が嫌になる。