「あいつだけ名前呼びとか…許せない。世界滅亡したらいい」
「ええっ」
き、規模が大きいよ…。名前よびで?
しゅんとしている綾瀬くんを見ると、思わず庇護欲が沸き上がってくる。私の方が身長が低いのに、なぜだか綾瀬くんの方が低く感じてしまう。
なんという、あざとさ。
あのクールな綾瀬くんが名前ひとつで……。
だめだ。か、かわいい……っ。
思わず目の前にあったそのサラサラの髪の毛に触れた。
「…え、夢野」
「…あ、これはその……サラサラで綺麗だなあって、思って」
可愛いなんて、今言える訳がない。たぶんさらに落ち込む気がする。
頭を撫でられた彼は、はあーー、と長いため息をひとつ。
そのあと。
「ーー本当、そういうところ」
「え?ーーっ」
次の瞬間にはふわっと抱きしめられた。ふわっとという割には、腕にぎゅっと力がこもっていて抜け出そうにも抜け出せないように。
「なんでそんな天然なの?本当…可愛すぎる」
「へっ」
突然の可愛い発言に顔が真っ赤になるわたし。今抱きしめられてて逆に良かったのかもしれない。こんなゆでタコみたいな顔、恥ずかしくてめ見せられないもん。
絶対心臓どきどきばくばくしてるよ……っ。
聞こえちゃうから離れてほしい…っ。
「あの、綾瀬くんはなしてーー」
というと、さらにぎゅっと抱きしめる力が強くなる。
「あやせくん、」
でも彼には聞こえてないよう。
これ以上は私の心臓が……っ。



