「……?」
なんだったんだろう…?さっきのふたりの会話。
とりあえず、さっきのピリピリとした張りつめた空気から抜けだせたことでほっと息をついた。
「ーねえ、あやせくーー」
「ーちょっとこっち来て」
言葉を遮られてたあと、少し強引に玄関の扉を開けたかと思えばずるずるとその場にしゃがみこんだ。
「えっどうしたの……っ?」
もしかして、体調悪い…?しゃがみこむほどお腹痛かったのかな…。
ここまで我慢していたことに気がつかなくて、申し訳ないよ…。
だけど彼の様子は少し違って、私の手をぎゅっと握ったあと、弱々しさが残る声で呟いた。
「……はあ。あせった……」
「え?」
何を焦ったんだろう…。
大丈夫?、と心配すると同時に、その弱った子犬のような母性をくすぐられる姿が可愛らしいとも思ってしまうというなんて悪魔な自分がいる。
「…夢野、あいつ…若宮俊からなにか言われた?」
「えー…と、こわいこと?べつになにも言われてないよ?」
「そうじゃないんだけど、…いや、やっぱいいや」
……なあにそれ。もう、綾瀬くんから聞いたくせに。
ちょっともやっとしたけど、綾瀬くんの次の言葉で吹っ飛んだ。
「あいつ、絶対夢野のこと好きじゃん」
「うん…、って、ええ!?」
いきなり何を言い出すかと思えば…っ。
「それはないよ~。俊くんって、みんなの爽やか王子様だし」
「それ。無理変えて」
「え?なにを…?」
それって、どれ?私なんかいけないこと言っちゃった…っ?
「俊くんって、…あいつのこと、名前で呼ぶのやめて」
「名前で?…んん、でも俊くんは友達だし……」
二度目の俊くん呼びをしたことで、ぐんっと立ち上がって距離が近くなった私たち。
「…なら、俺のことも名前で呼んで?」
「へっ」



