すると、ふたりはなぜかポカンとした様子でまたまたこちらを見つめた。
「……ふ、胡桃ちゃんがこう言ってるし、今日のところはここまでかな」
「……」
これまでの空気が少しだけ、俊くんが微笑んだことによって和らいだ。
「じゃあ胡桃ちゃん、またね」
「う、うんっ。またね。いろいろありがとうっ…！」
「あはは、こちらこそありがとう」
と言って、女の子なら誰しもときめくであろう笑顔を添えられた。
…うう、まぶしい…。後光が見える…。
「あ、それと、」
ふと思い出したようにそれまで帰る方向に向けていた足をこちらに向けて振り返った。
だけど、彼の視線は私の方には向いていなくて…。柔らかい表情なのに、鋭く突き刺さるような視線で隣に立っている綾瀬くんをまっすぐに見つめていた。
「綾瀬くんも…“またね”。……油断してたら横からかっさらわれるよ？」
「…お前には間にすら入れてやんねえ」
ちょっとだけ、いつもより低い声だった。
綾瀬くんの返事に俊くんははひとつにこりと笑って、今度こそ踵をかえしていった。
