そうきっぱり言ってしまえば、相手は諦めてくれたようで。



「ありがとう。夢野さん」


「いえ、」





(…あれ、私自分の名前言ったっけ……?)







◇◇◇




「ふう。わざわざここまでありがとう」



すごく助かった、と感謝される。



「いえ、私が勝手にやっただけなので…」


「いや、手伝おうかって言ってくれたの夢野さんだけだったよ」


「ほんとに自分が見ていてハラハラしていただけなので、お礼はいりません」



またまたそうきっぱり言い張ると、彼は目を見開いて、…なぜか吹き出した。



「ふは、意外と言うね。しかも謙虚」


ーこれは、なるほど。納得。



「……?」



その呟きは、小さくてあまり聞き取れなかった。



「夢野胡桃ちゃん…だよね?俺は○○。よろしくね」


「よろしくお願いします…。あの、なんで私の名前を…?」



おそらく始めましての彼…もとい、○○くんがなんで私の名前を知っているのか不思議でたまらなかった。



「そりゃあもちろん、きみが有名だから?可愛すぎる天使だって」



ゆ、有名っ…!?

しかも天使……!? なにその噂っ。



私なんて可愛さの欠片もないのに…。天使なんて、比べることが恐れ多い。



「ぜったいそれ人違いですよ……」