◇◇◇




とある日の休み時間。希ちゃんと、たわいもない話をしているときに、事件は起こった。



「……あ、そういえば。もうすぐ期末テストねー。胡桃勉強してる?」



「うんうんそうだね~、って、んん!?テスト!?」



(今、“テスト”って幻聴が聞こえたような…)


いや、幻聴だ絶対。うん、そうだ。あんな不吉な言葉、聞き間違えるはずがないもん。


だけど嫌な勘というものはこういう時にこそ働いてしまうもの。



「え、うんテスト。…あれ、もしかして、胡桃知らなかった?」


「うっ…。知らなかったよお……」



どうか気のせいであってくれという私の切実な願いは、あっという間に散っていった。


…もう少し早くこの話してよ、希ちゃん。


なんて、何も悪くない希ちゃんにやつあたり。



「知らなかったということは、勉強はーー」


「してない!してないどうしよう……っうう」



それくらい、私の今の現状は危険だった。



「の、希ちゃんは……」

「もちろん。完璧よ」

「うぅ…」


さすが、しっかりしてる。抜かりないですね、希さん。



「教えてよぉ……」

「ごめん。ちょっと難しいかも」

「えぇ…」



本当に困った。期末テストはもうすぐそこ。希ちゃんが無理なら、後は誰を頼ればいいのか。頼れる人がいないよ…。





「……あ、一緒に住んでる子に教えてもらえば?」




なんて、呑気なことを言い出す希ちゃんをちょっと恨めしく見つめた。




ーというか、





「一緒に住んでる子は年下(設定)だよ……」




第一、綾瀬くんは私と勉強なんてしたくないと思う。こんなバカな頭をしている私と。