ーー……
さかのぼること、約12時間前。昨日の夜の出来事。
この日も私は晩御飯を作っていた。ちなみにその日は1人で。
(最近綾瀬くん、私といても嫌がったりしなくなったなあ…)
この間までは私と一緒にいると、不機嫌が丸出しでオーラと共に顔に出ていたのに。
なんだか、まとっている雰囲気も少し柔らかくなったようにも感じる。
学校では相変わらずだけれど、家だと少し違う気がするのだ。
(何でだろう……。気のせいかなあ…?)
なんて、ぼーっと考えていた私がいけなかった。
「あっ、お味噌汁沸騰しかけてるっ…、ーあつっ…!」
腕をお鍋にぶつけてしまい、ぱしゃっと熱い味噌汁が指にかかった。
ーーけど、急にぐいっと手首を引かれて、
「ーーおい、早く冷やせっ」
「ーーえ」
気づいたときには手首を綾瀬くんに掴まれていて、やけどした部分を水で冷やされていた。
ひんやりとした水の感触が気持ちいい。
「あ、ありがとう…」
「…べつに。やけど放っておくとか、バカじゃないの」
…確かに。でも、綾瀬くんもばかだよ。ソファーでごろごろしてたくせに。
すぐに駆けつけてくれたんでしょう?
女嫌いなのに。嫌いな女のことなんて、放っておけばいいのに。
手首まで掴んで。
…なんでそんなに優しいの。



