クールな綾瀬くんと、秘密の愛され同居始めます。






現在、午後7時。




私の心臓は速く音を刻んでいます…。



目の前には、私の自作オムライス。…と綾瀬くん。


美世さんだけが場を盛り上げているという感じで、私と綾瀬くんの間の空間はとっても静か。


今、ちょうど彼がスプーンでオムライスをひとくち分すくって口に運ぼうとしているところ。



(どうか美味しくありますようにっ…)



ーぱく



「……」

「……」


美味しくないって言われたらどうしよう…。もともと嫌われているけど、もっと嫌われる。そうなったらこのお家で生きていけない。



ーぎゅっと、汗をかいている手を握る。



「………い」

「え?」

「…うまい」

「!!」



今、“うまい”って言ってくれた…?

ぱくぱくと止まらずに食べ進めてくれる綾瀬くんが嬉しくて、安心して、笑顔が溢れだした。



「よかった…」



「ーーーー、」






そのやり取りの後もどんどんオムライスはなくなっていき、お皿は空になった。




「ごちそーさまでした」


「あ、ありがとうっ…」




別に、と言って部屋に戻ろうとする綾瀬くんは、ふと立ち止まって首に手を当てながらくるっと顔だけをこちら向けた。



「なんで、そんな笑顔で頑張るの」


「え?なんでって…私の料理で喜んでくれるのがうれしいから…かな」


「そ」


私の答えに短い返事をして、また口を開く。




「カップケーキも、美味しかったから。…また晩飯作って」






「ーーーーえ」




そのまま、綾瀬くんは自分の部屋へ行ってしまった。



(『美味しかったから』)




ずっと、頭でこだまする。




「…ふふ、弥生ったら」


「どうかしたんですか?」


「あれ、照れてるのよ」


「えっ」





あの綾瀬くんが、照れてる…?




「…弥生、なんだか嬉しそうだったわねえ」



「…うそ」







ちょっとだけ、心を許してもらえた。




そんな気がした、同居5日目。