「ねえ胡桃、そういえば一緒に住むことになった子、どうだったの?」


「……、へ?」



現在、休み時間。希ちゃんにちょいちょいと手招きされて顔を近づけると、小声でたずねられた。



(ど、どうしようっ…?)



希ちゃんに同居のことを告げた時、“男の子”と一緒に住むとはさすがに言ってなかった。


なんて言えばいいんだろう。信頼している希ちゃんになら言っていいものか。内心パニックが起こっちゃってて、思わずすっとんきょうな声が漏れてしまった。

ちら、と隣で友達と話している綾瀬くんを見ると目が合って、ギロ、という効果音付きで睨みが飛んでくる。



(…言っていいわけ、ないよね…。うん。)



「えっとね、小学生の女の子でね、すっごく仲良くなれそうだったよ!」



嘘、ほんとはぜんぶ正反対。小学生じゃなくて高校生。女の子でもなくて、男の子。そして初日早々話しかけるなとも言われてしまって、仲良くなれそうな要素ゼロ。



(ほんとにごめんっ…。希ちゃん、これは墓場まで持っていかないといけないことなの…!)



言ってしまったら、後が怖い。だって、だってね、綾瀬くんから何か“絶対にバラすなよオーラ”が出ちゃってるから…!

それが私に矢みたいにぐさぐさ刺さってくるんだもん。


そして私の身も危険な気がする…。

まず、綾瀬くんを囲んでいる女の子たちのレベルが高すぎる。


みんな学校で美少女だとか、可愛いとか言われている子たちばっかり。