「君嶋さん、麻理さんは旅立ちましたか?」

「はい、今日の昼前に、、」


「君嶋さんには感謝しております、
 麻理の報われない恋を成就させて頂いたそうで、
晴れ晴れとした顔で喜んでいました」


麻理さんはマスターに全てを話したんだ、、


「マスター、本当にあれで良かったんですか?」

「君嶋さんが麻理を幸せにして下さるのが一番ですけど、それは叶わぬ夢ですから。
 麻理が納得できれば、それで良いと思います」


僕の心は晴れない、
大好きな人を悲しませてしまった。

麻理さんは、どんなに辛い思いをしただろうか、
僕を忘れるのに、どれだけの月日が必要だろうか。


「君嶋さん、元気を出して下さい。
今、麻理さんに頼まれたカクテルを作りますから」


「麻理さんに頼まれた?」

「えぇ、君嶋さんが来られたら作るようにと、」


マスターは、麻理さんの指示通り三杯のカクテルを僕に作ってくれた。

一杯目は、カサブランカ (甘く切ない思い出)

二杯目は、ブラックベルベット(忘れないで)


そして最後は、グランドスラム (二人だけの秘密)


マスターは三杯目のカクテルに、
麻理さんが書いたメモを添えて僕の前に差し出した。

「私は見てないのでわかりませんが、このメモの通りの意味らしいですよ」


メモを開く、

『圭悟、
 あの一夜の甘く切ない思い出を忘れないでね、
 麻由ちゃんにバレないように気をつけて、
 私と圭悟の二人だけの秘密だから、、
 圭悟、愛してるよ。    麻理 』

二人だけの秘密か、、

は、はい絶対に忘れません、

ま、麻理さん、、僕も愛してますから。


泣けてきた、、


高校時代の彼女と、これで2人目だ、

また、僕は大好きな人を幸せに出来なかった、

麻理さん、ごめんなさい、、


マスターが励ましてくれた、

「君嶋さん、麻理さんは必ず帰ってきますから、
 それまで私はこの店を守ってみせます、君嶋さんも応援して下さい、

 ここは、麻理さんの帰る場所ですから、、」