麻理さん、行かないで、、


彼女は窓ガラスに息を吹きかけて、何かを書こうとしていた。

発車のベルが鳴り、のぞみがゆっくりと動き出す。

麻理さんは、細い綺麗な指先で、

『あ・い・し・て・る』 

と書いて、涙目で手を振る。


僕は早足で追いかけながら叫んだ。

「麻理さん! 待ってるから! 帰ってきて!」


彼女に聞こえただろうか。

遠ざかる新幹線が見えなくなるまで手を振り続けた。