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出会った時から分かってたんだから、のめり込む前に会うのをやめておけばよかった。それなのに、会えるのが嬉しくて、声を聞けるだけで舞い上がって、メッセージ一つで死にそうなくらいキュンとするから。
ここまで、傷つきながらやってきてしまった。
なのに、どうして君がそんな、傷ついたような顔をするの?
「なんで」
不機嫌そうな声に変わって、大きくて素敵だと思ってた手が私の腕を痛むくらい強く掴む。なんでそんなに、必死そうな顔して、必死そうな声で、問い詰めるの。
私はだって君の好きな人の偽物役なのに。
「分かってるでしょ。私だってそろそろ、ちゃんとしたいの」
「ちゃんとしたいって何」
「そうやって声で威圧しないでよ、もう。私たちただの友達じゃん」
あ、やば。声にして、涙が出そうになった。友達ですら無かったりして。
「友達だけど、そうだけど、違うだろ。そうじゃないだろ」
「友達以外に何があるの? っていうか、こんなに近いのがおかしかったんだよ。リュウくん好きな子いるって言ってたじゃん。勘違いされるよ」
「違うって」
「何が違うの? 何も違くないよ」
都合が良い女で居て欲しかったってこと? もう練習の体のデートも、だいぶ重ねたじゃん。この数ヶ月ずっとだよ、ずっと私は偽物役。一度たりともその瞳は、私のことを私として見てないじゃん。
「待って瑞稀」
「待って、って変だよ。ね、もう手を離してよ。痛いって」
優しいリュウは、手を離してくれると思ったのに。握る力は弱まったのに、次は引っ張る力が込められる。
「勘違いしてる、瑞稀」
「勘違いしてないって」
「好きな子は瑞稀」
「へ?」
「好きなんだって瑞稀のこと」



