まぶたに、ピンクのアイシャドウ。瞳の中には、ハート型のカラコン。薄ピンクの髪の毛に、編み込み。ワンピースは膝上厳守。
今日だって、私はこんなに可愛い。メイクだって上手くできたし、服だって君好み。いつだったか、ファッション誌のをじぃっと見てたの知ってるんだから。
なのに、君は「可愛い」の一言をいつだって私にくれることはない。
待ち合わせ場所に来た君に、くるんっと回って髪の毛を浮かせてみる。
「どう? 今日の私」
「いいんじゃない?」
「そっか」
適当な君の言葉に、もう傷つきません。大丈夫、いつも通り。私を待たずに歩き出す、君の隣を早歩きで着いていく。
君の右手にこつん、と左手を当ててみた。繋いでくれることがないのは知ってる。そっと離れていくその右手を掴めたらいいのに。
君の目にはいつだって私じゃない人が映ってる。
やけになって、髪を振り乱して叫んでしまおうか。偽物でもいいと思って始めた恋だったのに、苦しくなってきてしまった。
「そろそろ、やめよっかなぁ」
匂わせしかできない私をバカにして、蔑んで、そして、こっぴどく振ってくれればいい。
「何を?」
君は、真剣な顔で立ち止まってくれるから。ついこの関係にまだ甘えてしまいたくなる。
「この関係を?」
疑問形にしたのは私の優しさだ、ばーか。君が私を好きだと言ってくれれば、私はまだ立てるのに。どうせ言わないよね、知ってる知ってる。
君の瞳に映るその人は、誰なんだろう。



