「得意な種目とかあんの?」

「うーん。球技はそんなに得意じゃないけど・・・、強いて言うならバスケかな?」

スポ少のバスケをやっていた光希(こうき)に付き合って、幼い頃にバスケの練習を何度か付き合ったことがある程度だった。決して得意とは言えない。


「ふーん」


何か考えてるような顔をして、何をするかと思えば、勢いよく手を挙げた。


「はーい。茜はバスケに出ます!」


手を挙げて、クラス中に聞こえるようにはっきりとした口調で言葉を発した。


「・・・ちょ、ちょっと!」


高らかに掲げられた腕を掴んで必死に降ろすが、もう既に、クラス中の視線が向けられていた。


「え、」
「鬼の子がバスケ出るの?」
「私、バスケなんだけど!死にたくないよ!」
「バスケに出るとか、普通にいやなんだけど」


あちこちからヒソヒソ声が聞こえてくる。
クラスメイトが戸惑っているのが嫌でも伝わってくる。それ以上に私だって戸惑っていた。



異様な空気に耐えられなくなり、勢いよく立ち上がる。ガタッ、と椅子が後ろに引かれる音が教室に鳴り響く。いきなり立ち上がった私に驚いたのか、シンと静まり返った。