「昨日、大丈夫だったか?」

俯いてる私の顔を覗き込む。お母さんに促されて一足早く帰宅した綱君は、私達の事を心配してくれているようだった。



「うん。かなり絞られたけど」

「だよな。俺も改めて謝罪に行くか?」


言葉遣いは乱暴で、行動は破天荒(はてんこう)なのに、こういうところはしっかりしている。
好感度が上がるしかない。


「それは、大丈夫。せっかく鬼の子の呪いを解く手掛かりを探そうって言ってくれたけど、当分は無理そう・・・・・」


小さく頭を振り、難しい事を伝える。


「そっか・・・・・」

残念そうな顔をしてポツリと呟くと、廊下に放り出されている、落書きされた机に視線を戻した。




「これ落ちんのか?」


落書きされた机を手でなぞり、怪訝そうな表情をしている。無言でしばらく私を見つめたあと、教室の入り口に向かって歩き出した。