ギ———ッと鈍い音を鳴らしながら蔵の扉を開けた。中は暗闇に包まれている。カチッと懐中電灯のスイッチを入れて、暗闇に光を照らした。

辺りを見回して照明のスイッチがないか探していると、パッと辺りが明るくなった。

「電気点いたな」

光希(こうき)が照明のスイッチを見つけて押してくれたようだ。電気がついて良かった。
いくら懐中電灯があると言っても、暗闇の中で書物の文字を読むのは難しい。


古い書物が沢山あるので、古びたインクの匂いが鼻に残る。私は何処となく懐かしさを感じた。

8畳程度の広さなので、決して広くはない蔵の中を見回した。

土壁で作られた壁一面は、子供の時の記憶よりも少し古びたような気がする。
外は夜になっても残暑のせいで蒸し暑いのに、分厚い土壁のおかげで、蔵の中は湿度が保たれているようだ。涼しくも感じる。





「なんか・・・・・、思ってたより綺麗だな」

「うん・・・・・」


普段使われていない蔵に、違和感を感じる。

この蔵は普段使われておらず、年に数回鬼王(きおう)家の誰かが来て、換気と軽い掃除をするくらいだ。

違和感を感じていたのは、私だけではなさそうだ。


「・・・・・綺麗すぎる」


そう。綺麗すぎるのだ。積み上げられた書物には埃が被っておらず、普段使われていない蔵とは思えなかった。


「昔来た時は、もっと埃が凄くて、もう来たくない。って思った気がする・・・・・」

「・・・・・そうなんだよ。俺もそれ思った。
昔この蔵に来た時は、埃臭くてじめっとしてた記憶があるんだよな」

「ってことは・・・・・。誰かが頻繁にこの蔵に来てるって事?」