まだ肌寒い3月、この街にある鬼桜は珍しい。
暖かい春になる前の3月に花が咲くのだ。




———卒業式


私は卒業証書と共に、淡い桃色に咲き誇る鬼桜を見上げた。雲ひとつない青空を背景にひらりひらりと、花びらが舞い落ちる。



春風になりきれていない3月の風が吹くと、綺麗な桃色に染まった桜の花びらが、雪のように降ってくる。






「鬼の子だ!」
「鬼の子って、人殺したんだろ?」
「こっちくんな!あっちいけよ!」



体に合わない大きなランドセルを背負っている子供達の言葉は、私に向かって投げかけられる。



子供は正直だ。思っている言葉をそのまま投げかけてくる。


「人殺しって誰に聞いたの?」




私が言葉を返すと、一瞬ビクッと体が動き、男の子達は顔を見合わせて、口を噤む。