「うっ、ずるい、よ、そんな風に言われたら・・・・っ、断れないの分かってる・・っ、でしょ?」


溢れてくる涙でうまく喋れない。泣きじゃくりながらも、精一杯言葉を伝えようと唇をゆっくり動かした。




「もし、生きられたら・・・・・・ずっと一緒に生きていこう。死ぬことになっても、それは俺が望んだことだから・・・・・・気に病むことなく忘れてくれ、なっ?」


止まることのない涙が伝う頬を彼の細い指が撫でて拭う。指先でさえも愛おしくて、また視界が滲んでいく。




「・・・生きてっ、ほし、い。ずっと一緒にいたい」


「あぁ・・・・・・俺も同じ気持ちだ」


「・・・やっぱり、っだめだ。離れたくない。明日にしない?」



明日も一緒にいたい。離れたくなくて決心が鈍る。


・・・・・・もう一度抱きしめてほしい。

もう一度、もう一度、欲にはキリがない。


「明日は今日みたいに話せる状態かも分からない。・・・・・・正直、今日体が調子いいのは奇跡だと思ってる。ちゃんと意識があるうちにキスして欲しい」


その瞳はまっすぐで真剣なことが伝わってきた。

私は返事をすることが出来ない。
・・・・・・往生際が悪い。



「茜、・・・・・・愛してるよ」



私の耳に触れた手で、口元を覆っていたマスクを外す。


「マスクしてなくても、可愛い・・・・・・」


そんなはずない。涙と鼻水も混ざって、ぐちゃぐちゃになっている。明らかに不細工なはずだ。だけど、止まることを知らない涙は、ずっと溢れて止まらない。