高鳴る鼓動を落ち着かせるために、深く深呼吸をして、ゆっくり話し出す。
「話っていうのはね、鬼の子の呪いの話」
「うん」
「200年前の女児の鬼の子の手紙が見つかったの。そこに記されていたのは、
『鬼の子の女児に接吻されたものは命を授かる』
つまり、鬼の子の呪いがもう一説出てきたの」
「・・・それって」
「うん、この手紙の呪いが真実なら、綱くんの命を助けられるかもしれない。ただ・・・、
『接吻された者は死す』
『接吻された者は命を授かる』
どちらの呪いが"作り上げられた嘘"で、どちらの呪いが"真実"なのか、分からないの」
「・・・・・・」
「実は昨日、眠っている綱くんに、口付けを落とそうとした。助けたくて。死んで欲しくなくて」
「・・・・・・」
「でも、私の接吻で殺してしまうかもしれない。そう思ったら、とてもじゃないけど、出来なかった」
「・・・・・・」
「綱くんに生きて欲しい。これからも一緒にいたい。でも、私の手で殺してしまうかもしれないのに、呪いの口付けなんて出来ない」
涙を堪えて話したかったのに、気付くと涙が大量に溢れていた。私の顔は大量の涙と自然現象で出てくる鼻水も混ざって、綺麗とは程遠い顔になっている。
「弱くてごめんね・・・」
助けられる可能性があるなら、助けたいに決まってる。でも、私のせいで彼が死んでしまったら、きっと私は耐えられない。