「俺、好きって言われてないけど?」
「・・・・・・・・・———好きだよ」
恥ずかしくて消え入りそうな声になる。私の言葉を聞くと、彼は満足そうに照れていた。その表情が愛おしくてたまらない。
「恋をする権利があるのか分からないけど、俺達は両思いってことだ」
両思い・・・。
その言葉を私が経験出来るなんて、思ってもみなかった。その言葉に、一瞬で笑顔が生まれる。
「両思いは合法的に、抱きしめてもいいってことだよな?」
「・・・・・」
「おいで」
なんだか恥ずかしくて返事が出来なかった私に、優しい声で囁いた。彼の声に自然と体が引き寄せられる。ギシッと、ベッドの軋む音と共に、彼の胸に顔を埋める。
球技大会の時にお姫様抱っこされた筋張った腕と、耳を埋めた男らしい胸元と、同じとは思えないほど、痩せ細って骨骨しかった。
ドクンドクン、彼の鼓動が耳に届く。その音は心地よくて、ずっと聞いていたい。
「あったかい」
人に抱きしめられると、こんなにあたたかいのか。人肌の温もりが荒れた心も満たしてくれる。
「茜は・・・、小さいな」
「もう少しだけ、こうしていたい」
「看護師か、母ちゃんに見られるかもよ」
「見られてもいいや」
誰に見られてもいいや。この温もりを離したくなかった。好きな人に抱きしめられることが、こんなに幸せだなんて、知らなかった。
片思いで充分って思ってたけど、こんな幸福を知ってしまったら、欲が暴れ出してしまいそう。



