⋆⸜꙳⸝⋆




朝日の光が部屋に差し込み、私はすぐに体を起こした。昨日の綱君の様子が頭から離れなかった。不安要素が多すぎて、早く朝が来て欲しいとひたすら願った夜だった。


嫌な予感が背筋に流れて、ベッドの上で目を閉じても眠りにつくことは出来なかった。泣き腫らした目を化粧でなんとか誤魔化して、朝からお見舞いへと向かう。


不安と恐怖で、足取りは自然と早くなってしまう。早く、早く彼の顔を見て安心したい。
この胸の苦しさを無くしてくれるのは彼だけだ。


病室の前に着くと、さらに動悸が激しくなる。落ち着かせる為に深く深呼吸をして、病室のドアをノックした。


扉を開ける瞬間、ごくりと息を呑む。


扉を開けると、窓側のベットに座って外を眺めている綱くんの姿が視界に入った。



昨日の姿が脳裏に浮かんでたので、寝たきりの状態ではないことに、まず安堵した。安心すると共に、目の奥がツンと熱くなるのだった。




「・・・おはよう」

「おはよう。天気良いな」


昨日とは違い目も合わせられて、会話も出来る。普通の人なら当たり前に出来ることも、今の私達にとっては奇跡なのだ。




「あれ?隣のベッドの荷物無くなってるね」


「ああ。隣の人は昨日の夜中に亡くなったみたい」



心臓がドクンと波打つ。返す言葉が見つからず、黙り込んでしまう。狭いと思っていた2人部屋は、隣の人がいなくなった途端に広く感じる。

昨日まで顔を合わせていた隣のベッドの患者さんが、もういない。"死"の怖さを改めて感じる。

病室のドアは閉まり、2人だけの空間はシンと静まり返っていた。