「だから、茜にすぐには言えなくて・・・。悩んでるうちに、お父さんの癌が発覚して、お母さん、頭が混乱しちゃってね。茜にお父さんを助けもらおうと、口を滑らせそうになった」
「あっ、あの時『助けて』って言ったのって、鬼の子の呪いで、お父さんを助けてって意味だったの?」
思い当たる節があった。お父さんの病気を教えてもらった時に、「助けて」と弱々しく言われたのだ。振り返ると、お父さんのお見舞いに行った時に流した涙。思い当たることが、次々と浮かんできた。
お母さんは、一人で抱え込んで、自分の中でたくさん格闘したんだろうな。そう思うと胸がキュッと締め付けられる。
「うん。お父さんを助けて欲しくて・・・。
でも、それはお父さんに頑なに止められていたから、踏み止まったの」
「・・・そうだったんだ」
私は頭の中で言われた言葉達を整理しながら、ハッと気付いた。"鬼の子の呪いが命を授ける"なら、死を待つだけの綱くんを助けることが出来るんじゃないか。
興奮してその場から乱暴に立ち上がった。
綱くんを助けられるのではないかという希望が、全身を稲妻のように駆け巡る。
「お母さん、私、助けたい人がいるの」
「・・・助けたい人って?」
「実は、好きな人がいて、彼は癌で緩和ケア病棟に入院してる。手の施しようがなくて、死を待つだけなの」
「もしかして、蔵に忍び込んだ時に一緒にいた彼?」
「う、うん」
勢いで好きな人がいると言ってしまったけど、冷静になると、途端に恥ずかしくなり顔が俯く。



