鬼の子




私達の知らない鬼の子の呪い?
その言葉に胸がドクン、と動悸を打った。この先を知りたいような、知るのが怖いような、ドクドクと心臓の鼓動が早くなる。


鬼王(きおう)家に代々伝わる書物には、『女児の鬼の子は呪いの子。接吻された者は死す』って記されていたでしょ?」

「うん」

「その鬼の子の呪いを、(くつがえ)す書物だったの」

「どういうこと?」


「順を追って話すね。お母さんとお父さんは、鬼の子の呪いを解く方法がないか、ずっと茜に内緒で調べてたの。鬼王(きおう)家の人間を知る人に聞きに行ったり、(くら)に残された書物を片っ端から探したり・・・・・」



私には身に覚えがあった。夏の始まりから最近まで、夜に家に誰もいない事が多かったのだ。


「もしかして、最近夜に家にいなかったのって・・・・・」


「・・・うん。なんとか鬼の子の呪いを解く方法がないか、仕事が終わった後、ずっと探してた。破り取った書物には重要な事が書かれてあった。茜に内緒で、その書物の解読をしてたのよ。家でやる訳にはいかないからね」




帰りが遅かった理由が、私のためだったなんて・・・・・。お母さんとお父さんが私のために、毎晩調べてくれてたなんて全く知らなかった。


知らなかったとは言え、2人がいないことを不満げに悪態をついていた、過去の自分が恥ずかしい。私に関心がないと思っていた両親が、私のために知らないところで頑張ってくれてたことを知って、鼻の奥がツンとなる。