鬼の子






秋も深まり、肌に当たる風がひんやりと感じるようになってきた。空を見上げると青く澄んでいて気持ちいい。そんな日だった。



この気持ちのいい空と風を一緒に感じたくて、中庭のベンチに2人で座り、空を眺めていた。




「今日の天気は気持ちいいな・・・・・」

「私は秋の風が好き」

「俺は春だな。桜の匂いが混じった春の匂いが、好きなんだ。今度、一緒に・・・・・」

言葉を詰まらせる。私もなんて言っていいのか分からずに、しばらく無言が続く。彼の方が先に重い口を開いた。

「・・・・・行けるわけないか」

「そんな・・・・・こと」


思わず言葉に詰まってしまう。


「"鬼桜"っていうこの街で1番有名な桜の木があるの。その桜はね、春になる前の3月に咲くの。卒業式の時期に咲く桜は珍しいんだよ?一緒に見に行こうよ」


私の問いかけに、目を細めて笑うだけで、返事はしなかった。その意味は言われなくても伝わってくる。



「・・・俺のお願い聞いてくれる?」


「うん。なんでも聞くよ?」