綱くんが私のために、他の患者さんに頭を下げていたなんて、知らなかった。
綱くんはそんな素振りを一つも見せなかった。自分が1番辛い時に、どうして人のために動けるんだろう。愛おしいという感情が込み上げてくる。
愛おしい彼の顔が早く見たくて、彼のいる病室へ向かう足取りは、自然と小走りになる。
「・・・・綱くん!」
「おお。なんかいいことでもあった?上機嫌じゃん」
「うん、ちょっとね」
「なんだよ。気になるな・・・」
「看護師さんに聞いたよ。私のために他の患者さんに頭下げてたって」
「・・・口軽いな。あの看護師」
軽く舌打ちをして、眉間に皺を寄せた。その表情は不機嫌そのものだ。そんな姿も愛おしくて、微笑ましく思ってしまう。
私のことをどう思ってるのか聞いてみたい気もするけど、聞いたらこの関係が終わってしまいそうで怖かった。
そばであなたが息をして、笑ってくれる。
今日も生きてくれている。それだけで十分だ。
この幸せが続くのなら、永遠に片思いでもいいと改めて思った。



