「あのね、神山(かみやま)さんも、私達看護師も、鬼の子だからって何も変わらないよ。
・・・これ言うと怒られるんだけど、綱くんね、神山さんや他の患者さんに茜ちゃんのこと説明して回ってたんだよ」


「えっ?」

「絶対言うなよ、って言われてたんだけど。
『茜は鬼の子だけど、唇が直接触れなければ死ぬことはない。本人はいつもマスクをして気をつけてる。見舞いに来るのを許してやって欲しい』って、一部屋、一部屋回って、頭下げてたんだよ」


「・・・知らなかった」


「中には裏でコソコソ言ってる患者さんもいてね、茜ちゃんの耳に入る前に説得したかったんだと思う。ふふふっ」

「・・・・?」

「ごめん、思い出しちゃって。だってね、『マスク越しなら唇が当たっても死にません。俺、マスク越しにキスしても死んでませんから』って真剣に言い回ってるんだもん。おばちゃん、顔が熱くなってニヤケちゃったよ」


ふふふっと、口角を上げてニヤリと微笑んでいる。


え。
綱くん、そんなことを言い回ってたなんて・・・。


その事実を聞いた途端に、恥ずかしくなり顔の体温が熱くなる。頬だけでなく、耳まで真っ赤に染まっていく。看護師さんと神山さんのニヤリと微笑を浮かべた視線が突き刺さる。恥ずかしくて、一刻も早くこの場から立ち去りたい・・・。