自販機コーナーで、飲み物を選んでいると、視線を感じた。その視線の先には、眉間に皺を寄せて睨みをきかせている年配の男性がいた。60歳後半くらいに見える。

「あんた、鬼の子か?」


しゃがれた声で話す男性の表情は、かなり険しい。鬼の子が病院にきて、不謹慎だと感じられたかもしれない。男性から感じる威圧感に、胃がキリキリと痛み出す。


「・・・はい」

「鬼の子が、こんなところに何しにきてるんだ?」

「鬼の子なのに病院にきて、不謹慎だと思われたなら、すみません。でも、病院(ここ)にどうしても会いたい人がいるんです。私の唇に触れなければ死にません。細心の注意を払って行動します。どうか、私がここに来ることを許してはくれませんか?」


彼に会いにくることを、許して欲しくて、気付くと私は深々と頭を下げていた。