「私の口からもお礼を言わせて。ありがとう」
「すみません。私そんなお礼を言ってもらえるような奴じゃなくて・・・・・」
この人には、隠し事をしたくなくて、自分の口から鬼の子であることを話そうと思った。
しかし、長年のトラウマから自分の口から鬼の子と告げるのは、相当の勇気が必要だった。頭では伝えた方がいいと分かっていても、心と体がいうことを聞かない。喉まで出かかっている伝えたい言葉を、声にすることが出来ずにいた。
「・・・・・大丈夫。聞いてるよ?」
困惑している私の様子を見ると、柔らかい笑顔を浮かべて言葉を続ける。
「茜さんが鬼の子って事は、聞いてるわ。私はこの町の出身じゃないから呪いのことはよく知らない。それに・・・・、私にとって茜さんは"大事な息子を前向きにしてくれた同級生"でしかないのよ」
私には勿体無いくらいの優しい言葉に、やっぱり綱くんのお母さんだ。と変に納得してしまった。
このお母さんに育てられたから、優しくて人の気持ちを考えられる綱君に育ったんだな。
私には恐れ多い言葉に、ただ、泣きながら頷くしか出来なかった。
「息子には人生悔いなく最後まで生きて欲しい。
茜さんには辛い想いさせてしまうことになるけど、可能であればそばにいてあげて欲しいって思ってしまうの。親バカでごめんね」
ハンカチで目元を抑えながら伝えられた言葉に、私はなんて返せばいいか分からなかった。
この綺麗な涙の前では、私が泣くことさえ失礼だと思った。



