———クラスメイトと笑い合う日がくるなんて。
暗闇に1人取り残されたと思っていた昔の自分に教えてあげたい。
今までのことを全て忘れる事は出来ないけど、素直に辛かったと伝えられた事で、私の中の胸のつかえが取れた気がした。
教室の空気がこんなに清々しいのは、初めてだ。
「良かったな」
私にだけ聞こえるくらいの声量で、優しい声で囁くと、ガタッと乱暴に自分の席に座った。
私はその背中を目で追ってしまう。今日も助けてもらった。辛い時や困ってる時に、手を差し伸べてくれる。暗闇の世界に独りでいた私にとって、綱くんはヒーローだった。
綱くんの後ろの席に座ると、大きな背中が、手を伸ばせばすぐ届くところにある。
いくら感謝しても足りない。込み上げてくる、このあたたかい気持ちはなんだろう。ずっと、ここに居たくなるような、この気持ち。
「・・・・ありがとう。
全部、綱くんのおかげだよ」
彼にだけ聞こえるように、小さな小さな声で囁いた。目の前にある大きな背中は、微動だにせず動かない。
「綱くんは、私のヒーローだよ」
感情の熱が高ぶっているせいか、普段なら絶対言えないようなことも伝えられた。
聞こえてて欲しいような、恥ずかしくて聞かれたくないような、そんな気持ちのまま背中を見つめていた。
ほんのり赤く染まる耳元が伝わったと教えてくれているようだった。