本音を言おうとするが、喉まで出かかった言葉を飲み込む。———みんなに伝える勇気が出ない。


チラリと横にいる綱くんを見上げると、「うん」と深く頷いている。そして、ポンッと優しく背中を押してくれた。




「・・・私、本当は嫌だったし、辛かった」


後押しされて、ありったけの勇気を振り絞って自分の気持ちを伝えようと思った。俯いていた顔を上げて、私に視線を向けるクラスメイトに向けて言葉を発した。


「毎日のように悪口を言われるのも、机に落書きされるのも、机と椅子を毎日廊下に放り出されることも、嫌だった。心にナイフが刺さったように、痛くて、・・・——苦しかった」


いくら言葉で打ち明けても、あの時に感じた辛い心情は少ししか伝わらないだろう。

ただ、少しでも、ほんの少しでもいいから伝わって欲しい。言葉は武器になるということを。
あなた達の言葉は、私の心に今も突き刺さったままだということを。


私が、こんなことを言うとは思ってもみなかったのか、みんなポカーンと口を開けて固まっていた。


「本当に、毎日が苦痛で辛かった。私は何もしてないのに。生まれたくて鬼の子に生まれたわけじゃないのに・・・。だから、今回は私、鬼の子だからって、謝りたくない!」


私は大きめの声でハッキリ伝えると、みんなの反応が怖くて目をギュッと瞑った。


言ってしまった。「私も鬼の子でごめん」と社交辞令のように謝れば、済む問題だったのに。

・・・・・でも、心はスッキリしている。
清々しい気持ちでいっぱいだ。


私はずっと、この感情を吐き出したかったのかもしれない。