後ろを振り返ると、綱くんの背中がどんどん遠くなっていく。遠くなる背中に向かって、言葉を放つ。



「・・・綱くん!お姫様抱っこ嫌じゃなかったよ!」


私の声に振り向いた綱くんは、少し遠くて表情がよく見えなかった。笑ってくれている気がする。

「・・・バスケ教えてくれてありがとう!
球技大会に出れて、私、嬉しかったよ!」


「・・・・怪我、早くなおせよ!」


そう言って手を上げた綱くんは、また私に背中を向けて歩き出した。


前の私なら『私の気持ちなんて伝えなくてもいいや』と後ろ向きで、伝えないで終わっていただろう。

だけど、自分が今思ってることを、ちゃんと伝えたいと思ったんだ。

たったそれだけのことだけど、私にとってはとても大きな事だった。綱くんと出会えたことで、前向きになれている気がする。



そんなことを考えながら、遠くなる背中をじっと見つめていた。




そんな私の背後で、何かを想い、
切ない顔をする光希には・・・・・、
———気付くことが出来なかった。