鬼の子


学校全体の生徒から避けられ、虐められている私の唯一の味方は、同じ高校に通う従兄弟(いとこ)鬼王 光希(きおう こうき)だった。



光希のお父さんと私のお父さんが兄弟なので
光希もまた、(おに)の子だった。




同じ鬼の子でも私と違うのは光希が男子ということ。これが、天と地ほどの差なのだ。





「茜!一緒に帰ろう」



授業が終わると、従姉妹の光希が私のクラスにいつも迎えにきてくれる。

「・・・・・・あ、うん」


「光希様だ〜」
「今日もカッコいいですね」
「光希様を拝めたから良いことありそう」


疎ましがられている私の返事は、黄色い声に簡単にかき消された。女子たちの歓声で辺りは騒然とする。



光希は目鼻立ちがくっきりとしていて、栗色で癖毛のようにふわふわした髪の毛。学生の中でも目を引く容姿をしていた。

その上、鬼王(きおう)家の男児は"幸運の子"と呼ばれ、他民を幸福にすると言い伝えられている。

古くからの名残りは今も残っていて、町の人は光希(こうき)のことを"光希様"と呼ぶほどだ。


学校でも光希と親しくなりたい人は後を立たず、歩いてるだけで黄色い歓声を浴びるのだった。


寄ってくる人だかりに嫌な顔を一切みせずに、笑顔をキープしつつのらりくらりと対応するのは、まるで一国の王子様のようだった。