鬼の子





笑い合っている私達に視線が集まっている事に、全然気付かずにいた。ヒソヒソ声が聞こえてきて周りに目線を送ると、私達を見ている人たちと視線が重なる。そこでようやく、たくさんの人から見られていた事に気が付いた。


「おいー」
「え!そういう関係?」
「こんなところでイチャつくなよ!」


球技大会というイベントで、みんなテンションがハイになっているのか、冷やかしの声があちこちから飛ぶ。

冷やかしの声は笑い声も混じっているので、本気ではなく、からかいの冷やかしだと感じる。



「っち、めんどくせぇな」

眉間に皺を寄せ、露骨に嫌な顔をする。不機嫌だと言わんばかりに、舌打ちをした。


あ、綱くん、冷やかされたりこういうの嫌いだよね。
私のせいで、嫌な気持ちにさせちゃったかな。


自分を責めていると、体がふわっと宙に浮いた。


花束のような香りが直ぐ間近に感じられた、と同時に、ひょい、とすくいあげるように抱き上げられた。私はなぜか綱くんにお姫様抱っこをされている。


「え、なっ、な、なんで?」

何が起きているのか、すぐには理解出来なかった。

「・・・・めんどくせぇから、逃げんぞ」


戸惑っている私をよそに、綱くんは走り出した。背後から「キャー」と女の子たちの黄色い歓声が聞こえてくる。


体育館にいる生徒からの。視線や騒ぎ立てる声を、一切気にすることなく走り続け、体育館を後にした。