朝から銀二に連れられて警察署にやってきた。
銀二の代わりにお姉さん達が遊んでくれてたけど、やっぱり銀二の傍が一番落ち着く。
記憶が無くなる前もこんな風に誰かが優しくしてくれてたのかな……。
昨夜、あの道で目が覚める前、僕はどうしてたんだろう……。
思いだせそうなんだけど……
雨が降って……
いや、雨は目が覚めたあとに降りだした。
雨の前……
お姉さん……?
さっきの人達?
違う。
なんだろう。
何が違う……
何が違う……?
『神山さんっ、これ刑事課にも』
突然声がして驚いた。
背中にぴりっと電気が走るみたいな感覚がした。
さっき大きな声を出していた人がまた来ていた。
銀二も驚いたのか、おどおどしている。
『は、はい。おつぼ…』
『何?』
『い、いや、お疲れ様です』
『服に花粉がつくと落ちないから。気を付けて』
『はいっ。ありがとうございますっ』
そのひとはフンって鼻を鳴らして出ていった。
銀二は両手に何か抱えている。
それ………。
………そっかぁ………わかった。
『銀二、それ何?』
『芦原、これ何だ?』
『はぁっ。せんぱ〜い、マジっすか?
これはユリの花っしょ』