夜中になっても消えないネオン。

足早に行き交う人間。


この街は眠らない―――。




………けどっ、俺は寝かしてくれっ(泣)


重たい足を引きずって、夜の街を一人歩く。



俺の名前は神山銀二。
もうすぐ四十路に手が届く受難続きの三十代独身。
職業はこの街の治安を護る正統派(?)刑事だ。





この前、後輩から

『先輩ホント格好いいっすよ。
今どきやーさんでも先輩みたいな人はいないっすよぉ』


とか言われたけどな……





まぁ、そういうことだ。

今日はやっと一週間ぶりに、いや、日付変わったから八日ぶりか。
まぁ、とにかくやっとこさ仕事の隙を突いて自宅
(六畳一間、辛うじてユニットバス付き)
に帰れることになった。

徹夜三日目、
(いや、四日目か?)
風呂もそれくらい入ってない。
(一応、パンツと靴下は一昨日コンビニで買って履き替えた)


それもこれも全部、ここ最近のこの街の治安の悪さにある。



その中でも特に今一番世間を騒がしているのが、若い女性の連続殺人事件。

今月に入って四人目の遺体が見つかった。



被疑者はおろか、遺体の身元、殺害場所の特定なんかも出来ていない。


連日マスコミから激しいバッシングの嵐。
小学生は集団登校。
警察関係者はピリピリ。
鉄道関係者は連日パトロール……

おぉっと。これ以上は勘弁してくれよ。


まぁそんなお陰で毎日泊まり込んで捜査してるわけだ。



オマケに雨まで降ってきた。

傘ねーよ。



俺は上着を頭に被って走った。雨足が強い。

仕方ないからアパートへの近道を通ろう。

雑居ビルの間の狭くて小便臭い通路だ。



普段は敬遠したいところだったが、この雨だ。なんとか早く帰りたかった。


それが運の別れ目か。

まさかとんでもないもん拾っちまうなんて。