「私は、12歳の時に事故で両親を亡くし、伯父と伯母に育てられました。
その伯母に、10歳以上年の離れた方と結婚するように言われました。
相手の方は大企業の副社長さんで、私の勤め先の取引先でもあります」


私は短大卒業後、伯母の紹介で百貨店に勤めており、今は美容部員として働いている。


「断るわけにはいかないんです、色んな意味で。
伯母には感謝していますし、育てていただいた恩に報いるべきとも思っています。
…でも、結婚は好きな人としたいです」


結婚を約束した初恋の人を今も忘れられないでいることは、黙っていた。
流石に痛い女だと思われるだろうから。


「私たち、互いの利害が一致してると思うんです」

「そうですね、改めて確認できて良かったです。
それにしてもご両親を亡くされて、苦労されてきたでしょう?」

「周りの人に支えられました」

「そうですか」


一通り自分たちの自己紹介が終わった。
恋人のフリをするなら、互いのパーソナルは知っていなければおかしい。

そのために話してくれたのだと思ったが、同時に青人さんがとても誠実な人だと知れてよかった。


「永美里さん、この後お時間はありますか?」

「はい、ありますが」

「その…デートしませんか?」