「さっきも言ったけど、お前が居なきゃ人生つまんない。どんなにくだらない内容でも俺の前でニコニコ笑って楽しそうにしてくれてればそれでよかった。他の女なんか1人も必要ない」





ぎゅ、と握られた棗の手に確かな意志を感じる。


愛されてる、そう気付かされる。





「なづ…」



「ふっ…泣くなって言ったじゃん」





そう言って私の涙を掬い笑う棗の目も、いつもよりどこか潤んでいるように見えるのは多分気の所為。



私たちはコミュニケーションが足りていなかったことはたぶん棗も気づいていた。




「たくさん心配かけてごめん」



「うん」



「たくさん迷惑かけてごめん」



「…うん」



「でも…私には棗しかいないから…!棗は私の唯一無二の存在だから…!」




涙で言葉がつっかえても、棗は急かさずに涙を拭う。



壊れ物を扱うかのようなその熱い指先は涙腺を何度も刺激した。





「ごめん。俺がいつも一言足りないせいだよな」



「棗…っ」



「泣くなって、あとどさくさに紛れて鼻水つけようとすんな」



「なんでバレたの〜!うう…」





今までの人生で1番…いやさすがに盛ったけど



私の記憶がある限りでは1番泣いたと思う。



人前で涙を流すのは苦手なはずなのに、棗といると我慢も遠慮も全てが弾けてしまう。