【咲鈴side】


「ん、電車まで30分以上あるから座ってな」


「ありがとう」





2人で並んでベンチに座り、棗が差し出してくれたいちごミルクを手に取る。

棗の反対の手にはカフェオレ。



私の好きな物、ちゃんとしってるんだ。




自販機で売ってるいちごミルクは何種類かあるけど、私が好きなのはこのブランドのいちごミルク。

前にそんな話をしたのを覚えていてくれたらしい。



そういう所がマメなのも、棗のずるい所。





「なにその顔」


「棗の器用さに妬いてるだけ」


「なんだそれ」




棗は目つきの悪さで損をしている思う。



かっこいいけど、どこか近づきがたい。

孤高の存在というか、高嶺の花というか。


本来男の子に使う言葉じゃないのかもしれないけど、棗にはピッタリな言葉だと思う。




ああ見えて甘党だからブラックコーヒー飲めなくていつもカフェオレ飲んでるところとか


他人に興味がなさそうに見えて実は好きな飲み物まで知ってるところとか


私が倒れたからって、電話1本で4時間かけて飛んできてくれるところとか。




不器用が故にあまり目立たないけど、棗はとってもとってもギャップと優しさに溢れているんだ。




みんなに知って欲しいと思う気持ち半分、私だけ知っていればいいと思う自分もいる。