「咲鈴より馬鹿なヤツこの世界に居ないと思ってたけど、あいつの方がバカだよ。ここまで電車で何回も乗り換えて4時間近くかかるっつーのに」
「…っ、棗が…来てるの?」
「俺やっぱり、咲鈴の笑顔が見たいんだよ。お前が笑ってないと意味ない。隣にいれても咲鈴が幸せじゃなきゃ意味ないって思った。だからさ…」
フッてよ、咲鈴。
私は最低だから、先に涙を流す。
そして恭ちゃんは優しいから、やっぱり私の涙を拭う。
私にはもったいないくらいの人だ。
こんなにも愛してくれる人を、私は…
「…っ、ごめん…!恭ちゃん…っ私……やっぱり棗が好きなの」
「うん…わかった。ありがとう」
「……っ、うぁ…!」
「泣かないでよ、俺が泣かせたってぶっ飛ばされるかも」
その言葉に頑張って涙を引っ込めようと試みるも虚しく感情のダムは決壊したままだった。
「咲鈴、明日からも友達でいてよ」
「…っ、え」
「さっきアイツと話して、ちゃんと許可取ってあるから。あとついでに宣戦布告しといた」
「…っ、?」
「次咲鈴のこと泣かせたら、その時こそ横からかっさらうって」
「……もちろん譲る気ないけどな」
足音で気づいていた
この部屋に誰が向かっているのか。
そして声を聞いて確信して、その確信が涙に変わる。



