夏川さんに煽られて、まんまとひっかかって殴りそうになって


それを間一髪のところで棗に止められた。




あと1秒遅かったら私はみんなの前であの子の頬をひっぱたいていたと思う。


あと一歩で私は…




「お前は悪くない」


「でも…」


「飛鷹棗があの女とのことを解決するまで距離置いたままの方がいい。また絡みに来るだろうから廊下1人で歩くのも禁止」




棗と距離を置く。


それはまたしばらく棗と話せない日々が続くことを意味していた。




棗はさっきのを見て、どう思っただろうか。


夏川さんにお前が悪いだろっていってたけど、私があの子に手を出そうとしたことは紛れもない事実だった。



殴りかけた瞬間、夏川さんはぎゅっと目を閉じた。




怖かったと思う。



知ってたのに、あの子が昔どんな目にあってきてたのか。

それなのに私は手をあげようとしたんだ。




「…荷物もってくるから、今日のとこは帰るぞ。教室戻りずらいだろ」


「…ごめん、恭ちゃん」


「ごめんよりありがとうのほうが嬉しいんだけど?」


「…っ、ありがとう」




椅子に座ったまま泣き出す私の頭を優しく撫でて、恭ちゃんは保健室を出ていった。




そして荷物を持ってきてくれて、しっかり家まで送ってくれて。


途中で寄り道してアイスを半分こなんてしちゃって。