「あ、じゃあせめて美紗には紹介したいかも」
「いつも一緒にいる?」
「そうそう、舞川美紗ちゃんって言うんだけど。男子バレー部のマネージャーなの」
そういうと棗はああ、あの人かと納得した表情を浮かべた。
私がこんなにもずっと棗に付きまとっていたと言うのに、美紗と棗は1度も接していない。
美紗は怖いからと言っていたし、棗はそもそも興味無さそう。
「こないだ柏崎くんは紹介したよ、補習の帰りにたまたま部活中の美紗に遭遇して」
「……そ」
「だから棗も…あれ、なんか機嫌悪くなった?」
「べつに」
ふいっと視線をそらされた。
嘘つき。なにがべつに、だ。
棗が私の目を見ない時は、95%機嫌が悪い。
いい加減私でもそれくらい分かる。
「どうしたの?私何か変なこと言っちゃった?」
「……お前補習の時柏崎と2人で帰ってたの」
「え、うーん日によるけど、柏崎くんがバイトじゃなければま一緒だったかな」
「……あっそ」
棗は深いため息をひとつついて今度はスマホを取り出した。
私といる時、いつもはスマホなんか一切見ないくせに。
棗は分かりやすい。



