「優花ちゃーん！　順番だよー！」

　遠くから麻美の声が聞こえるけれど、声が出せない。
　まるで蛇に睨まれた蛙のように、動けなくなる。

　いや、そんな風に思うのはおかしいとわかっている。

　だって、あれはただの絵だ。

　なのに、目が逸らせない。
　光を宿した漆黒の瞳から。

　どうして？

　ただの絵なのに、まるで生きているみたいな瞳で上から私を見下ろしている。

　恐怖が足元から全身を舐め、頭の中の警報を鳴らす。

　＿＿逃げろ。

　なのにこの身体は、いうことを聞いてはくれない。


　____っ！？


次の瞬間、黒い瞳がピカッと光ると同時に、視界がぐにゃりと歪んだ。

　色が滲んでは、色褪せていく世界。　
　地面を踏む足の感覚も、周りの音も消えていく。

　なのに目の前にある漆黒の瞳だけがハッキリと見えて、怖くなった私はギュッと強く目を閉じた＿＿。