「民の財を集めておられるなど、笑い事ではありませぬぞ。増築はするわ、延々と水路を掘り公の食糧は消費するわで、民は不満を申しております」

 必死に訴える大岩さんに、皇子は何も言わずただ耳を傾けている。

 民のお金に食糧。
 この時代の民がどんな生活をしているのか、私にはよくわからない。だけどあの茶色に染まった村は、質素な民の暮らしを表している。それなのにそんな人達のお金も、食糧も奪っている。

 “__民の不満の表れ”

 幾度となく火災にあう飛鳥宮を、五月雨さんはそう言った。その意味を、私はやっと理解する。

 皇子はどう思っているんだろう。ここからだと、その表情は見えない。